[ 歩いた山の紹介 ] 2009/10/12(月)
3連休、どうしても土曜日に断れない仕事がスポットで入り、剱北方稜線は不参加の連絡(結局山行自体が中止になった)。芦生に単独で行こうとルートを練っているタイミングで、マイミクさんの写真展で偶然会ったchicoちゃんから「私も行きたい」「じゃあ一緒に行く?」。
予定は、11日~12日の1泊2日。須後→大段谷山→小野村割岳→天狗岳→七瀬(テント泊)→傘峠→上谷→櫃倉谷→須後。人間の踏み入れない森の奥深くへ長い尾根と、芦生を代表する2つの癒しの谷をつなぐスペシャルコースです。ハードな藪漕ぎや渡渉もあります。
テント泊装備だけど、2人だけの少人数での行動だし、テント一式や炊事用具など重いものは僕が持つので、過去の実績コースタイムの1.5倍で行けるだろうとプランニング。荷物は僕が18キロ、chicoちゃんが12~13キロ。
chicoちゃんとは昨年の秋の黄葉の時期、晩秋の時期、今年の新緑の時期にも芦生を歩いています。山登りの対象としては低く目立つ山頂もない芦生の森だけど、西日本最大の原生林が残り、希少動物や植物も含めて多くの生き物が生存している癒しの森。この森を好きになり、大事にしてくれる人が増えることはとてもうれしい。
須後に到着し、入林届を提出して歩きはじめたのが8時50分。今日は登山者が歩くルートと全く逆方向にだいぶ歩いてから山に取り付きます。後から須後をめざしてやってくる登山者の車から、荷物持って反対方向に行く私たちを不思議そうに見られていました。
そして朝一番の渡渉。期待通りやってくれました(笑)
今日の由良川は先の台風の影響でいつもの2倍くらいの水量。流れも早く、太ももまでの水位を渡っていても踏ん張っていないと流されそうでした。「パンツまでビチョビチョ」。「歩いてる間に乾くよ」
本当は大段谷山へ直登する尾根に取り付きたかったのに、道路から河原に下りたポイントが悪く、渡渉後に修正しようという考えも河原を歩くことができない水位で断念。やむなくP730を経て灰野からの登山道に合流する尾根を登ることにしました。はじめてのルートでしたが、適度に急登の藪漕ぎで標高600mくらいから快適な尾根歩きになりました。
このあたりにも見ごたえのある芦生杉の巨木が点在していました。杉の巨木を土台にして何種類もの別の木が宿り木として成長しています。登山道と合流してからは昨年の晩秋に歩いたルートです。
尾根は谷よりも黄葉がずいぶん早くなります。ブナやトチの葉はすでに色が変わり始めています。一部ですが左の写真のように見事な紅葉も。
ブルーベリーのように甘くておいしかった果実(右)
昨年、12月上旬の晩秋にここまで来て日だまりでお昼寝をした場所です。雷杉は今も元気に生きていました。足元には芝栗がいっぱい。うかつに地面に膝を突いたり手を突いたりするとイガが刺さってびっくりします。
すでに枯れてしまった芦生杉の土台に無数の宿り木が大きく成長して遠目には葉を茂らせた大木が生きているように見えます。
なぜかポストのある小野村割岳。ここまでは一般登山者の方も歩かれているルートです。それでもいくつもの枝尾根があり、地図とコンパスを使って歩けないと別の尾根に簡単に迷い込んでしまいます。迷った方が往復の踏み跡をつけているので気をつけましょう。
すでにここで14時20分。chicoちゃんもがんばって歩いているけど、スピードが上がりません。バテているのでなく、単純にマイペースで森の雰囲気を楽しみながら歩かれています(笑)。
この時点で日暮れまでの七瀬到着は微妙になってきました。しかもこの先は僕も初めてのルートです。エスケープするならここから広河原へ下山することになります。でもエスケープの選択は全く考えませんでした。彼女も元気、行く気満々、テントもある、食料もある、日が暮れたらそこで泊ればいいだけ。
天狗岳をめざして踏み跡もあやしくなってきた迷いやすい尾根を地図を見ながらトレース。尾根の方向が複雑に変わるので落ち葉で踏み跡の消えるこれからの季節は自信のない方は入り込まないのが無難です。見飽きるくらい芦生杉の大木が出てきます。
天狗岳手前では森も深く、まだ16時前なのにヘッドランプが必要なくらい真っ暗になったところもありました。夏と違い日没も早いです。
16時54分天狗岳山頂。2007年に別ルートで来た時にあった山頂表示がなくなり、どこが山頂かわからなくなっていました。ここから七瀬に延びる尾根はブナがきれいな森だと聞いていたので楽しみにしていました。しかし、もう日没カウントダウンです。
それでもブナ林に心を奪われるchicoちゃん(笑)
渡渉、藪漕ぎ、迷いやすい尾根をさんざん歩いてたどり着いた天狗岳。その山頂からテント場予定地の七瀬へは、由良川本流に落ちている尾根を立ち木につかまりながら下降しなければなりません。
「できれば七瀬まで。危なそうならビバーク。暗闇での特攻はやらない」と自分でルールを決めて薄暮の中を慎重に下りました。徐々に斜面が急になり、藪が出てきて真っ直ぐに進めません。由良川本流の音がよく聞こえてきたので目と鼻の先まで来ているようです。しかしついに真っ暗になり、どこが尾根かもわかりません。
「もし下がガケだったら」「もし下降点に河原がなく、本流の深い流れに落ち込んでいたら」「下降できても真っ暗な中を安全に渡渉できるか」等々リスクを考えると、「快適なテント場で鍋料理」を天秤にかけるわけにはいきませんでした。
心はビバークに決めてchicoちゃんに「安全な場所まで登り返そう」と伝え、ビバークの言葉は出しませんでした。これからしんどい登り返しなのにショックが大きいと思ったからです。
「ザックが重かったら空身でいいよ」「全然大丈夫です!」の返事に「まだ元気やなあ」と感心しました。chicoちゃんが続けて「でも、もう一度下るのはムリです」と言ったのを聞いて「ああ、カラ元気を出して頑張ってるんやなあ」と気が付きました。
ようやくテントを張れる場所まで戻り、「よく頑張った!ここでビバークしよう」といったらchicoちゃん本気泣き。思わず「その涙はどういう意味があるん?」と聞き返してから「もうちょっと気の利いたこと言わなあかんなあ」と反省。「こんなんどうってことないって。誤差の範囲や。計画が甘かったみたいでゴメンな。せっかくやからここで楽しもうや」とさっさとテント設営にかかりました。
テントを張ってしまうと、ここはここでいい環境に思えて、キャンドルローソクに火を入れ、コーヒーで休憩。やっと落ち着きました。
こういうときに心配なのは水。chicoちゃんの残り500cc、僕のほうは合わせて1.5リットル。いつも予備1リットル持って歩くので助かりました。夕食は豪華な鍋料理の予定でしたが明日の昼に回して、今夜は水を使わないメニュー。おつまみも出して、ワインを1ボトル2人で飲んでしまいました。見上げると木々の隙間から満天の星空。テントに入ってからも、仕事のこと、恋愛のこと、子育てのこと、いつまでも話し続け、22時を回った頃にやっと眠りました。神経が興奮していたのでしょうね。
朝、5時40分起床。快晴。でも森の中はまだ暗い(笑)
2日目の行動をどうするか朝になってから決めることにしていたので相談。ショックも大きいだろうし七瀬からトロッコ道で須後に下山という選択肢も用意しておいたのだけど、chicoちゃんは「行く!行く!」と言う。すっかり回復(爆)
そうと決まればテント撤収し、朝食とって出発。明るくなれば尾根の下降なんて楽勝。あっという間に七瀬(笑)
水筒に水を補給。顔も洗って、カップに2杯も水を飲んで。うま~(笑)
七瀬から傘峠南尾根に乗るため七瀬中尾根の急登・藪漕ぎ。芦生の藪漕ぎルートをいろいろ歩いてきたけれど、ここが一番きつい。きれいな紅葉も目に入っているのかどうか(笑)。一人では40分で抜ける標高差300mを1時間30分。かかりすぎやろ~(汗)
ということは、どう考えても予定ルートでは今夜もビバーク(爆)
相談の上、芦生中央尾根は予定通り歩いて、中山から下谷林道、内杉谷林道で須後に帰ることにしました。
ということは、「この尾根でいっぱい遊ぼう!」に切り替え(笑)
ヤマボウシの果実。木をゆするとバラバラ落ちてくるのでそれを拾い集めてデザートタイム。桃のようなイチジクのような美味。「皮が苦い」と皮を器用に剥きながら何個も食べるchicoちゃんの顔はリスのようでした。
写真右は中央尾根のブナ林ゾーン。お気に入りの場所です。
傘峠935mは京都府で標高7位の山。昨日登った小野村割岳が8位、天狗岳が9位です。傘峠も八宙山も三角点はなく、このプレートを見落とすと気付かずに通り過ぎるような尾根道の「コブ」です(笑)。
お気に入りのブナ林ゾーン「その2」です。さっきと違う場所。こういう大きなブナが今はまだ残っていますけど、芦生全体ではブナの大木が毎年倒れています。残念なことに世代交代するブナが育っていないことです。温暖化の影響も言われていますが、一番は鹿の食害で、芽を出しても食べられちゃうからだと言われています。
もう1枚、大きなブナ(写真右)です。お気づきでしょうか?
すでに黄葉し、ほとんど落葉していました。尾根の黄葉は早いのですが、この時期とは驚きです。
面白い形の木に見入り、穴の開いた木があれば覗いてみたり、くぐってみたり。物見の小屋のあった巨大ヒノキにはとうとう登ってしまった(笑)。降りる姿がまた傑作だったのですよ(爆)
お昼御飯はいつもの長治谷まで行かずに由良川のお気に入りの場所で。素晴らしい景色を眺めながら、昨日の夕食になるはずだった鍋料理。肉も痛んでなく、豆腐も原形を保ったまま。食材はすべてchicoちゃんにおまかせ。煮込みうどんまであって大変美味でした。安心して嫁に出せます(笑)
長い林道をマイペースで歩き、途中の湧水の場所でコーヒーを入れて、最後までまったり満喫した1泊2日の芦生テント行でした。
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2日間のGPSログ:歩行距離38km、累積標高差2798m
by 高橋秀治 : URL
by てくてく : URL
ご一緒いただきありがとうございました。
一人で歩くことが多いので、いつも見ている木なのに名前も知りませんでした。いい勉強になりました。
芦生で見かけたら声をかけてくださいね。
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本日の櫃倉散策ありがとうございました。
また、芦生の山でお会いできるのを楽しみにしています。男子2名で参加の内のキャラバンの沢靴ですかと尋ねた、遠近のメガネをしていた高橋です。